私は学生の頃から、声優に憧れていました。
しかし、
「どうせ自分には無理だろう」
と諦めたり、養成所へ通うお金を用意できなかったりで、実際に挑戦することはありませんでした。
そんな私が初めて動いたのは、就職のタイミングです。
会社員の安定した収入があれば、養成所費もまかなえるので、
仕事と両立できる養成所なら、挑戦できるかもしれない。
そう考えて、
日本ナレーション演技研究所の週1クラスに通うことを決めました。
このときはまだ、習い事感覚の軽い気持ちでした。
ところが、
レッスンに通ううちに、声優になりたい気持ちはどんどん強くなっていきました。
気づけば日ナレに5年間。
その後もほかの養成所や声優事務所を渡り歩き、32歳で夢を諦めるまで、9年間も声優の夢を追い続けました。
しののめこの記事は、そんな9年間を振り返る体験記の第1話です。
今回は、日ナレの入所試験から、基礎科で過ごした1年間をお話しします。



「芸大で演技を学んだ経験もあるし、本科から入所できるだろ~」
そんな舐めくさった気持ちで向かった日ナレの入所試験が、私の9年間の始まりでした。
声優を目指した9年間|全8話
第1話 日ナレ|入所試験・基礎科 ← 今ここ
第2話 日ナレ|本科
第3話 日ナレ|研修科
第4話 俳協ボイス
第5話 ヒューマンアカデミー
第6話 無名の中小声優事務所
第7話 AIR AGENCY
最終話 声優の夢を諦める
入所試験
入所試験に落ちて焦る


まずは入所試験を受けました。
日ナレは基礎科、本科、研修科の3クラスがあり、
演技経験に合わせて基礎科または本科からの入所を希望し、試験を受けることになります。
本科からの入所を希望すると、
願書にある「本科が不合格となった場合、基礎科への入所を希望しますか?」という設問に回答する必要があります。



この設問に、私は「希望しない」と回答しました。
「この方が自信があると思われて好印象だろう」と、変なアピールを考えていました笑
日ナレの入所試験は、
- 中学レベルの国語テスト
- 簡単な質疑応答
- 実技試験(早口言葉・セリフ等)
だったと記憶しています。
本科に受かる気満々で、試験前までは余裕をこいていた私ですが、当日は緊張でガチガチでした。
面接の受け答えがしどろもどろになり、実技では噛みまくりました。
とはいえ、芸大で演技を学んだ経験もあり、最低限の表現はできたつもりでした。
また「日ナレの入所試験は、まず落ちることはない」という噂も信じていたので、「まあ受かるだろ」と安直に考えていました。
そして……



落ちました……



いや、めっちゃ嫌なフラグ立ってましたよ!
まさか9年の内の1年は、これで終わりとか言わないですよね!?



マジでそうなるかと思ったよ
幸い、日ナレの入所試験は複数日程で開催されていたから、慌てて再受験したよ
さすがに再受験では考えを改め、基礎科からの入所も希望しました笑
再受験の結果、今度は無事に合格。
ただし、「基礎科は希望しない」と自信満々だった私が、最終的に手にしたのは基礎科への合格でした。
こうして、本科から入るつもりだった私は、基礎科から日ナレ生活を始めることになります。
基礎科


基礎科の講師


基礎科の講師は関連事務所の男性声優さんでした。
当時の年齢で30代前半くらいの方で、めちゃくちゃイケメンでした笑
誰もが知る人気声優ではありませんでしたが、有名コンテンツで役を持っているような人で、講師の方が名前を名乗ったとき、教室がザワザワしたのを覚えています。
派手な印象とは打って変わって、演技指導は丁寧でロジカルでした。
本人曰く、講師になるにあたって相当勉強したようで、スタニスラフスキーの演技論を元に、自身の経験を掛け合わせて教えているとのこと。



勝手に1番の恩師だと思ってます。
この方の教えが、私の演技の核として残っています。



まさに基礎科に相応しい講師ですね!
クラスの雰囲気


土曜のお昼からのクラスだったので、若い子だけでなく、私を含め会社員も半分くらいはいました。
クラスの年齢層は、高校1年生の16歳から、社会人の30歳くらいまででしたね。
当時24歳の私はちょうど中間の立ち位置で、色んな世代の仲間と出会えました。
年齢は違えど、お芝居については同期として対等に語り合える環境が新鮮でした。



レッスン前は公園に集まって練習したり、
終わったらファミレスで夢を語り……
あれは青春だったな



同じ夢を持つ仲間と出会えるだけで楽しいですよね♪
レッスン初期「座学/自己紹介・スピーチ/日ナレストレッチ」


基礎科は、演技未経験を対象としたクラスなので、
はじめの3か月くらいは演技のレッスンではなく、その前段階の座学や基礎練習がほとんどでした。
座学
座学からの実践といった形式です。
お芝居をする上で必要な発声方法や距離感、台本読解、役者としての心構えまで、講師持ち前のロジカルな説明で教わり、その後実践するといった具合です。
たとえば、感情表現の回であれば、講義を受けた後に「指示された感情をみんなの前で表現する」といった感じです。
自己紹介・スピーチ
初回レッスンではもちろん自己紹介をし、
その後のレッスンでもテーマを渡され、1分ほどのスピーチをする機会が度々ありました。
スピーチはどの養成所でもよくやらされました。
1分間くらいで話せるトークネタは日頃から集めておくと、レッスンに役立つと思います。
日ナレストレッチ
ストレッチをしながら発声練習をするという、日ナレの定番メソッドです。
毎レッスンの最初の30分くらいは、日ナレストレッチでウォーミングアップをしていました。
手を抜こうと思えばいくらでも抜けるこのメソッド、
毎回全力でやれるかが、評価につながると思っています。



他にも感情表現の練習として、みんなで大笑いしながら教室中を歩き回って、目があった人には元気よく挨拶する!なんてこともしたな笑



演技レッスンということを知らない人が見たら、怪しい団体に見えそうですね……
レッスン中期「台本を使った演技実習」


少し暖かくなってきた時期から、台本を使った演技実習が始まりました。
1~2ページほどの練習台本を、演じては講師のフィードバックを受け、また演じるという形式でした。
初めは短い2人芝居から始まり、徐々に尺が長くなり、人数も増え……といった感じで、難易度はどんどん上がっていきます。
それまでの3か月で学んだ、セリフを発する際の距離感や発声、台本読解などを活かす実践の場でした。



セリフを覚えてこない奴がいたり、急に相方がレッスンに来なくなったり、揉め始める時期だね。



モチベーションの差が、はっきり出る時期なんですね。
レッスン後期「舞台公演」


寒くなってきた頃、レッスン最終月に舞台公演をおこなうという案内がありました。
台本は事務局が用意した既存のものを使用しました。
準備は配役決めから始まり、最後の3か月のレッスンはずっと舞台公演に向けての稽古でした。
配役はオーディションではなく、講師が、それぞれに合うと思った役を決めるスタイルでした。
私は運よく、狙っていた主役に選ばれて嬉しかったですね。
舞台公演は日ナレのレッスンスタジオ内で行いました。
当時は他のクラスの人も観客として見に来られたので、緊張感がありました。



公演が終わったあとの達成感は格別でしたね。
これを仕事にしてる人がいるなんて羨ましいと思ったよ。



習い事感覚だった声優のレッスンが、少しずつ本気で目指したいものに変わっているようですね。
所内オーディション


舞台公演の案内とは別に、実はもうひとつ重大な案内がありました。
そう、日ナレ関連事務所の所内オーディションです。
その1次審査が年明けに行われることを伝えられ、事前課題の用紙を渡されました。
1次審査


1次審査は年明けのレッスン日に行われました。
いつものレッスンスタジオがパーテーションで空間を分けられ、名前を呼ばれたら審査エリアへ入り、1人ずつ審査を受けていきます。
審査エリアに入ると、厳格なオーラを放つ審査員が3人並んでいました。
それぞれ関連事務所のマネージャーや、事務局の職員たちだったと記憶しています。
審査内容は年によって若干変わるのですが、確かこの年は、自己PR、当日課題の早口言葉、事前課題のセリフだったと思います。
入所審査のときとは打って変わり、心を入れ直した私は、この日の為に事前課題を猛練習。
正月休みも返上して練習をした甲斐あり、この日は我ながら手応えを感じるパフォーマンスができました。



ちなみに、日ナレあるあるですが、不登校になった生徒が、1次審査の日だけワンチャン狙って復活することがあります笑



その図太さがあって、なぜ不登校になってしまったのですかね!?
1次審査の結果


1次審査の結果は、合格者にだけ書面にて郵送されると聞かされました。
合格通知がいつ頃までに届くのか、正確な日程は知らされておらず、受験者はそわそわして待つことになります。
審査には、それなりの手応えを感じていました。
とはいえ、この頃はまだ、自分が本当に声優になれるとは思っていなかったので、ぶっちゃけ気楽なものでした。
その頃は舞台公演の準備中だったので、結果を待つことよりも、「早くレッスンでお芝居したいな~」とばかり考えていました。
審査から1週間ほど経った頃、同期から「合格通知が届いた」と連絡が入りました。
そこで初めて、合格者には日ナレ特有の緑色の封筒が届くことを知りました。
「あなたなら絶対合格している!」
同期からそんなエールをもらい、電話を切りました。
そして、その翌日。
なんと、私の家にも緑色の封筒が届きました!
急いで封を開けると、そこには「1次審査合格」の文字がありました。
もしかして、このまま事務所に所属して、声優デビューできる!?
一気に期待が膨らみました。



ちなみに、約30名いたクラスから、合格者は私を含め3名だけでした。



本当に狭き門なんですね…
2次審査


緑色の封筒には、1次審査の合格通知と一緒に、2次審査の案内も同封されていました。
2次審査は、日ナレの関連事務所による書類審査です。
期間内にプロフィール用紙とボイスサンプルを作成し、提出します。
ここからが本当の審査という感じがしましたね。
当時はプロフィールを手書きし、ボイスサンプルをCDに収録して提出する形式でした。
合格した喜びに浸る間もなく、提出期限までは1週間ほどしかありませんでした。
ボイスサンプルの原稿作成
私はボイスサンプルを作るのが初めてです。
「ボイスサンプルの原稿って、何を書けばいいんだ……?」
これが、めちゃくちゃ難しい。
もちろん演技も大切なのですが、原稿を自分で用意する以上、演技力というより文才を求められているような気さえしました。
何を演じれば、自分の良さが伝わるのか。
どんなセリフなら、事務所の人の耳に引っかかるのか。
考えても考えても正解が分からず、準備期間の大半を原稿作りに費やしました。
宣材写真の撮影
さらに、プロフィール用の宣材写真も必要です。
こちらも、仕事終わりに慌てて撮影しに行きました。
原稿を考えて、宣材写真を撮って、ボイスサンプルを収録する。
本当に怒涛の1週間でした。
ボイスサンプル収録
ボイスサンプルは、少しでも音質にこだわった方がいいと思い、録音スタジオを借りて収録しました。
しかし、初めて入る本格的なスタジオに、私はガチガチに緊張してしまいます。
モニターヘッドホンをつけて、マイク前で演技をする。
その慣れない環境が気持ち悪くて、芝居にまったく集中できませんでした。
「マイクの前じゃなければ、もっとできるのに……」
声優を目指している人間とは思えない弱音を吐きながら、何度も録り直しましたが、納得できるものにはなりません。
それでも、スタジオの利用時間には限りがあります。
気づけば終了時刻を迎え、最後は「もう、これで出すしかない」と無理やり自分を納得させました。
- もっと時間があれば。
- もっと早く原稿が完成していれば。
- せめて、マイクの前で普段どおり演じられていれば――。
悔いの残るボイスサンプルが完成し、すべての提出物が揃いました。
あとはもう、祈ることしかできません。
「頼む、受かってくれ。受かってくれ……!」
そう願いながら、提出用の封筒をポストに入れたことを覚えています。



後日、講師からは「事務所の人は音質なんて気にしないから、スマホで納得するまで録り直した方が良かったよ」と言われました。



そうなんですね!?
もっと早く言って欲しかったですね。
2次審査の結果


2次審査の結果は、合格者にのみ電話で通知されるというものでした。
わざわざ口頭で合格の連絡をしてくれるという点が、3次審査へ進める人数の少なさを物語っていますよね。
例のごとく、合格通知がいつまでに届くのか、正確な日程は知らされません。
受験者は、またそわそわしながら結果を待つことになりました。
とくに今回は電話連絡です。
仕事中もずっとスマホを気にしながら、電話がかかってくることを祈っていました。
しかし、電話がこない日々だけが過ぎていきます。
そして、日程的に考えれば、もう3次審査が始まっているはずの時期を迎え――。
私は、自分が2次審査に落ちたことを悟りました。
こうして、私の日ナレ1年目は幕を閉じました。



うわーん、1年間おつかれさまでしたぁ
自主的にボイスサンプルの準備をしっかり進めて、来年こそ!絶対受かりましょうね!!



ありがとう。
結局、うちのクラスからは1人も3次審査へは進めませんでした。
おわりに|日ナレ1年目を終えて
日ナレの1年目を振り返りました。
入所試験ではいきなり落ちたものの、基礎科では舞台公演の主役に選ばれ、所内オーディションの1次審査も通過できました。
周りからは「演技がうまい」と褒められることも多く、正直、かなり調子に乗っていた1年だったと思います。
当時の私は、
「1年目でここまで行けたなら、来年こそは所属できる!」
と本気で思っていました。
しかし、ここから少しずつ歯車が狂い始めます。



次回は、日ナレ本科編です♪



講師ガチャで大外れを引きながら、2度目の所内オーディションへ挑んだ25歳の1年間を振り返ります。


声優養成所を選ぶ際、もっとも重要視するべきことがあります。
それは、直近で運営元の声優事務所が人気声優を輩出しているかです。
直近で人気声優を輩出できるということは、そのノウハウとチャンスを現在進行形で事務所が持っていると判断できるからです。
残念ながら、全ての声優事務所に平等に仕事は降ってきません。
とくに、アニメの出演オーディションは、製作委員会から限られた声優事務所にしかオファーを出しません。
せっかく苦労して声優事務所に所属できても、オーディションの話がこなければ本末転倒ですよね?
そのような観点から、日ナレは最良の選択肢であると私は考えます。
過去から現在に至るまで、日ナレから生まれる人気声優の数は業界の中でもトップクラスです。
現在所属している方は勿論、他事務所の人気声優も元は日ナレ出身ということもよくある話です。



声優養成所を選ぶ際のポイントは以下記事でも解説しています。
日ナレの実績のすごさがよくわかると思います!




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